先日の11月27日、台湾の主要都市の首長選挙結果。
根據台灣中央選舉委員會公布的數據,國民黨籍候選人郝龍斌、朱立倫和胡志強分別當選台北、新北和台中市長。
民進黨籍候選人賴清德和陳菊分別當選台南和高雄市長。





国民党候補者の郝龍斌、朱立倫と 胡志強がそれぞれ台北、新北、台中市長に当選。
一方、民進党候補者の賴清德、陳菊がそれぞれ台南と高雄市長に就任。
今回の選挙では高雄では、民進党の現職市長、現職県長の合作が失敗し、分裂選挙になった。また高雄を襲った台風後の対応について、国民党系メディアが民進党候補者である陳菊に大規模なネガティブキャンペーンを行った。しかし南部ではネガティブキャンペーンの効果はほとんどなく、大差で勝利した。
台南はもともと民進党の勢力が最も強い地域で、終始民進党が優位に選挙戦を進めていた。予想通り、民進党候補者が大差で勝利している。
一方、台中、台北、新北は国民党がそれぞれ首長の座を守った。
今回の焦点は台中、台北、新北など、民進党が首長の座を奪取できるかどうかが注目されていた。結果だけ言えば国民党側が勝利したといえる。
銃撃事件の影響
選挙前日、国民党名誉主席連戦の息子が銃撃されるという衝撃的な事件が起きた。
這一次國民黨搶下三席,尤其在台北市大勝,很多人都說,就是因為選前連勝文遭到槍擊的事件,讓選情翻盤。
http://tw.news.yahoo.com/article/url/d/a/101129/69/2i2uy.html
ほとんどの台湾メディアも今回の選挙に前日の銃撃事件が大きな影響を及ぼしたと分析している。とくに台北市では予想以上の大差になったのは、銃撃事件で同情票が集まったからだと言われている。
今回の選挙で国民党陣営が最も心配していたのが、馬政権に不満を持つ国民党支持者が選挙の投票に行かず、棄権されることだった。事実、前回の台東の選挙では国民党の投票が大幅に減少し、国民党が敗北するという結果になった。しかし事件の結果、そうした国民党よりの支持者がやはり投票し、結果、国民党票の減少を抑える事になったと見られている。
一方、銃撃事件は実行犯の一人は逮捕されたが、共犯の二人は逃亡し、まだ捕まっていない。
事件直後、容疑者は警察の取り締まりに対し、連勝文を銃撃したのは人間違いで、ほかの国民党候補者を狙っていたと述べている。犯人と国民党議員と土地を巡り、トラブルが起き、その報復で銃撃したと供述している。しかし連勝文本人は病院で犯人は撃つ直前、彼の名前を叫び、銃撃してきたと答えており、犯人の供述は偽りで連勝文本人を狙っていたと答えている。
また国民党候補者も土地トラブルがあったことを否定している。
実は2004年に起きた陳水扁銃撃事件も容疑者が自殺していたという、背後関係があいまいなまま、事件究明の幕が閉じた。やはり選挙賭博と関係しているのではという声も多いが、どこまで事件の究明がすすむのかはかよく分からない。
前回、陳水扁が狙撃された事件では事件後、国民党は事件を自作自演だと訴え、台湾政治が大きく混乱した。しかし今回はそのような混乱は起きないだろう。これを台湾の民主主義が深化した証拠だという声もあるが、民進党が国民党のような執拗な抗議を行わないだけで、立場が逆ならば、どうなっていたのかは分からないのではと思う。
このあっさりした性格は良かれ悪かれ台湾人気質で、国民党の持つ中国人的な粘着質な性格と大きく異なっているのが見て取れるのでは。
2012年総統選挙に対する影響
今回の選挙が注目されていたのは、今回の選挙が2012年総統選挙に大きな影響を及ぼすと言われていたからだ。特に台北、新北は台湾の政治、経済の中心で、その注目度はケタ違いだ。李登輝以来、歴代台湾総統はみんな台北市長の経験者で、それだけ大きな政治的影響力を持っている。
しかし今回の選挙では現職の汚職疑惑や不祥事が相次ぎ、国民党首長の支持は低下する一方だった。そのため今回の選挙では、民進党側が当選する可能性も少なくないと見られていた。そのため現在、北部や首長交代、国民党の勢力が強い台中で民進党が勝利すれば、2012年の総統選挙にも大きな影響がでるだろうと見られていた。
だが国民党が三都市とも勝利した事は中国人観光客の急増や中国経済の好況の影響を受け、リーマンショック後、低迷した景気も回復しつつあり、このような経済環境が国民党側に有利に働いたと言えるだろう。

しかし純粋に国民党側の勝利だったかと言うと、単純には言い切れない。選挙全体の得票率だけをみれば、民進党が全体の49.87%の票を獲得し、国民党は44.54%で、得票率だけを見ると民進党が上回っていた事が分かる。南部の選挙では圧倒的に民進党が票を獲得し当選していた野に対し、北部では両党が拮抗していたためだと言える。
陳水扁の汚職疑惑以降、民進党の支持は低迷し、得票率でも国民党と大差をつけられていた。その結果、2008年の総統選挙で、民進党は破れ、再び国民党が与党になった。しかし馬政権発足後、様々な問題が起き、国民党の支持も再び低下している。その一方で、蔡英文を中心にポスト陳水扁体制を築いた民進党の支持を再び取り戻してきたと言える。
特に南部では国民党を圧倒する支持を集めるようになっている。
台湾では中国と関係強化によって、経済的利益を受ける層と、そうではない層とはっきり分かれ、今回の選挙結果は、南部では中国との関係強化に対し、強い警戒感を抱いている事が分かる。
朝日新聞では今回の結果を、台湾が中国との関係強化を肯定化した結果と評しているが、台湾内部はそれほど単純ではないと思う。事実、台湾人の意識調査で、近年の中国との関係強化に関わらず、中国との統一を支持する割合が減少する一方だ。経済的関係の強化が台湾人の統一に対する拒否反応を減らしていないことを示している
首都選挙の敗北は本来、民進党にとってダメージは少なくない出来事だ。特に新北市長選挙に出馬した蔡英文らの政治的影響力の低下は免れない事だった。今回市長選に出馬した蔡英文、陳菊らは民進党で最も人気、実力を備え、2012年、総統選挙の民進党側の有力候補でもある。そのため国民党は、民進党は市長を総統選までの腰掛けにすぎないと批判したため、当選した際、任期終了まで市長を務めると公約していた。ようするに今回の市長選で当選した場合、総統選挙で当選の確率が高い政治家が総統選に出馬できないという状況になる。
今回は銃撃事件という突発的なアクシデントが起き、土壇場で状況が一変してしまった。民進党内部では落選の責任を問う声は一部から出てきているが多くはなく、党内の多数が続投することを支持しているようだ。皮肉な話だが、銃撃事件のため、蔡英文は2012年の総統選挙に後腐れ無く出馬することができるようになったとも言える。
しかし民進党が抱える問題は少なくない。一番の問題は民進党はもともと反国民党を旗印に結成した経緯から、党内部では政策の違い、派閥など、内部対立が激しい構造を抱えており、党内部の派閥争いが党勢を著しく衰えさせている。また台湾メディアは圧倒的に国民党系メディアで、さらに最近ではチャイナマネーも台湾メディアに進出していて、三立、民視など台湾本土派メディアもあるが、資金力で劣っている。そのため既存の大手メディアでは民進党に対するネガティブキャンペーンばかりで、何かと劣勢に立たされやすい。
また馬英九の就任以降、チャイナマネーの影響は強くなる一方で、台湾経済は中国経済に取り込まれつつある。そのため、中国との距離を置く事がますます難しくなってきている。
はてさて、どうなることやら。