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2011.01.14

中国の失地農民について

 近年、中国の発展が著しいことは周知のことだが、この繁栄の裏に、土地バブルの発生による土地の買い占め、強制的立ち退きなど負の一面も起きていることもよく知られている。

 日本が80年代後半に経験したバブル景気と現在の中国経済の状況は大きく異なり、中国は今でも深刻な貧富の差を抱え、しかも好景気にも関わらず、多数の失業者を抱えているなど、深刻な社会矛盾を抱えている。

 そうした発展する中国が抱える深刻な問題の一つには『失地農民』、すなわち急速に進む開発、または土地バブルの余波を受けて、多数の農民が土地を失っているという問題である。Voice of Americaに中国の土地を失った農民、そうした農民らの就職問題に関する興味深い資料があったので、訳してみた。


 著名な学者である費正清は以前、「中国は統計学者にとって地獄である。」という言葉を残している。中国の機密資料に触れる事ができない学者にとって、正確なデータを参照することは非常に難しい課題だ。

 北京の中央政府は2003年、土地を失った農民の人数と、彼らの就業状況を報告するように中国各地方の省政府に通達をだした。しかし中国全土を網羅したし正確な資料が欠けているのが現状だ。

 その2003年の調査を元に、浙江師範大学教授の王景新が土地を失った農民の人数の推計を発表している。

 2003年、王教授は河北、山東省、湖北省、広西省、浙江省、雲南省など11省と134県でサンプル調査を行い、この調査から土地を所有している農民人口は全体の84.5%だったことが分かった。少なくとも13.7%の農民には土地を持たず、農地を失った農民が5,093万人から5,525万人いることが分かった。

 また産児制限を超えた出産などの理由で、土地が分配されなかった農民の人数も加算すれば、農地を持たない農民の人数は6000万人を超すと考えられる。

 さらに2003年から2006年までに中国全土で合計約1億2700万人もの農民が農地を失ったと考えられる。

 2006年3月、中国農業省は接収された土地の面積を調査するよう通達をだした。その調査から、工業化と都市化とともに、一年間で農村の立ち退きを迫られた土地の面積は400万亩(*亩は中国の土地の単位、1亩は0.0667ヘクタール=0.165acre)、そのうち200万亩はもともと農地で立ち退きによって、約100万人の農民が農地を失っている事が明らかになった。

 中国農業省が公表した中国全土の流出した耕地総面積は、平均耕地の推計に基づく簡単な統計に過ぎない。実際の中国の一人当たり平均耕地は2亩以下に減少している。1996年の統計で農民一人当たりの耕地面積は1.59亩、それから10年後の2006年には1.39亩まで減少している。すなわち1996年から2007年の11年間で、中国の総耕作地の面積は1億2500万亩も減少した。減少した農地の総面積を一人当たりの平均農地である1.4亩で割ると、2007年までに中国全土で、およそ8928万5千人の農民を耕地を失ったと考えられる。

 さらに2008年以降、中国の不動産はバブル状態に陥り、接収された農村の土地はさらに増加している。

 中国国土資源省は山東省、天津、江蘇省、湖北省、四川省などで「都市建設用地増減管理法」を試行し、2008年から正式に実施している。その新しい管理法とは、農村の建設用区画地と都市の区画の割合が直接リンクし、農村で建設用に区画された土地を整理し、耕地を増増加させた場合、都市部で同面積の土地を建設用区画の土地に転用できるようになった。この政策の結果、各地で土地の区画変更が行われるきっかけになった。およそ20省、市でこの政策が奨励され、大規模な「農民マンション居住推奨運動」が行われた。この計画に応じ、様々なスローガンが掲げられ、「都市と農村の統一計画」、または「新農村計画」、「旧農村改造」、「小都市化」などを謳い、土地区画の見直しが行われた。しかしその見直しとはは農民を強制的に立ち退きを命じるもので、現地政府が暴力的に、現地の農民に強制立ち退きを命じ、多くの農民が居住地を奪われるという例が相次ぐことになった。

 この土地を強制接収する目的は明らかで、農民をマンションに居住させ、農村の住宅用と区画された土地を減らし、その一方で、都市で建設用地区画の割合を増加させる事だった。

 中国各地の農村で、強制立ち退きの結果、何人もの農民が土地を失ってしまったのか、その詳しいデータは今も明らかでないが、少なく見積もっても2000万人の農民が土地を失ってしまったと考えられる。すなわち最も控えめに計算しても、ここ数年の経済発展の一方、1億2千万人の農民が土地を失ったと考えられる。

 この農村強制立ち退き運動で、数千万人の農民が家だけでなく、未来までも失ってしまった。彼ら土地を失った農民が直面する最大の問題は就職が難しいことだ。この7,8年間、多くの地方政府の研究機関などでは農民の調査を行っている。

 その調査の結果、35歳以上の土地を失った農民のうち、30%から40%が就職できず、仕事が見つからない状態になっていることが分かった。しかしこれは控えめなデータだと考えられる。

 中国社会科学院の調査チームが以前、広東省の各都市で調査を行った。その結果、土地を失った農民のうち、68%が仕事が見つからないという統計が公表されている。広東省は中国内でももっとも経済が発達し、仕事の機会も中国内陸部よりも多い土地だ。にもかかわらず、多くの失地農民は仕事からあふれてしまっている。この広東省の結果から、他の地区が広東省よりも就職機会が多いとは思えない。

 就職問題は中国が抱える最も大きな問題だ、中国農民は都市化の名目で土地を失った後、就職機会がない、農地がない、住居がないという状況に追い込まれがちである。

 このような就職機会がなくなる「都市化」は、すでに「偽都市化」と言っても良い。中国中央農村工作チームのサブリーダーも、現在のような安定した時期に、大規模な農村の強制退去を行われるような事例は「中国の歴史上、前例がないことだ」と警告を発表し、今の無摂生な開発は、後に大きな禍根を残す可能性があると発表している。

まとめ

  • 中国の土地を失った農民の正確な人数を把握することは難しい。
  • 2003年の調査では、5,093~5,525万人の農民が土地を失っていた。
  • 2006年の調査で、土地を失った農民の人数はさらに増加し、約1億2700万人の農民が土地を失った。
  • 2008年以降、中国で土地バブルが発生し、新たな土地政策のため、さらに多くの農民が土地を失っている。
  • 土地を失った農民の就職機会は非常に限られ、35歳以上の農民のうち、30−40%が仕事が見つからない。広東省のデータでは68%の農民が失業状態で、新たな就職機会が得られていない。

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