元ネタはBBCから。
Wikileaksが暴露したアメリカ国務省の機密外交文書は米中関係を分析している専門家にとって、驚くような内容の資料はなかったと言うのが多くの専門家の共通する意見だ。しかし暴露された文書には何らかのニュース価値がなかったとはいえない。詳細に分析すれば興味深い内容が浮かび上がってくる。
欧米メディアが最も注目した内容は中国の北朝鮮政策と、中国政府がGoogleに行った一連の嫌がらせだろう。この件に関して、驚くべきことは、アメリカ国務院には有力な情報源が無かった事が分かった事だ。例えば中国の朝鮮半島政策に関して、暴露された内容は北京当局は北朝鮮を見放している、または中国は北朝鮮と距離を置こうしているという会話が暴露されている。しかしこの情報は韓国と中国の副大臣クラスのプライベートな会話で、話した内容に過ぎない。しかし中国の政治システムでは、朝鮮問題など重要政策では副大臣レベルの外交官が独断で決定する事ができないのだ。それゆえこれらの情報がそのまま中国の立場を反映しているとは言えない。また中国ハッカーがGoogleの電子メールシステムに侵入したというスキャンダルでは、アメリカ国務院の情報源は町中の噂に過ぎず、その信頼性は議論の余地がある。
今回暴露された内容で専門家が最も注目しているのは、アメリカ外交官らが、現在の米中関係と、中国の外交政策をどのように分析しているかという点だろう。
今回、暴露された内容から理解できる事は、現在、アメリカ当局が最も憂慮していることは、アメリカが中国を抑制する力が失われる事だ。今までの米中両国の国力には大きな格差があり、アメリカ当局の圧力に北京は耐える事ができなかった。しかし現在、米中両国の力関係は大きく変化し、アメリカの伝統的な対中政策は中国の勃興によって大きな挑戦を受けている。WikiLeaksが暴露した内容では2010年、ヒラリー国務省大臣がオーストラリアのラッド(当時首相、現外相)の会談した際、対中政策でクリントンはラッド首相に「金を借りてくれる銀行家にどうやって強行姿勢をとりようがない。」クリントンは中国が最大の債権国になっている事実を指摘し、中国に対して強い態度で迫る事ができないアメリカの内情を嘆いている。このクリントン大臣の発言に対し、ラッド首相はラッド首相は「自分は現実主義者だ」と発言し、具体的な回答はせず、クリントン大臣自身もその議題を続けなかった。
しかしクリントン大臣が指摘した問題はまさにアメリカ当局の対中政策の現状を示している。アメリカは外交で袋小路に陥り、急成長を遂げ、意気盛んな中国に対抗できないことだ。その一方で中国のアメリカに対する態度も変化している。Wikileaksが暴露した電子メールの中には、興味深いアメリカ駐中大使の分析が掲載されていた。
その外交官は、最近、中国の官僚達の態度は非常に傲慢で、アメリカが中国に経済制裁を行うような覚悟なければ、中国の保護主義に全く効果を上げる事は難しいだろうと分析し、アメリカは硬軟を使い分け、交渉に臨むよう提言している。このメールでは具体的に強硬対策は書かれていないが、譲歩できる対策として、対中技術輸出制限の緩和を例にあげている。
Wikileaksが暴露した文章から、アメリカの駐中大使らは、米中関係が今後も安定的な関係を維持する事は難しい事だと考えていることが分かる。中国政府はアメリカの台湾に対する武器販売、またはチベット問題で強行な姿勢を見せており、憂慮すべき要因が少なくない。また北京当局の為替政策、そしてGoogleに対する攻撃は、アメリカ政界の反発を招いている。
そしてアメリカ国内の高失業率と中国との巨額な貿易赤字がアメリカ国内世論の反中意識を高めている。このように米中両国には、潜在的な対立要因が多い、しかしこのような状況でも、その大使はそれほど悲観的すべきではなく、中国の勃興はアメリカには巨大なビジネスチャンスをもたらすと主張している。そしてアメリカ政府にとって米中関係にとって最も難しい課題は協力と対立する中で、双方妥当な妥協点を見つけ出す事が重要だと。
Wikileaksが暴露した近年のアメリカのアジアの一連の活動を分析するならば、アメリカ政府は中国当局に対し、有効なカードを持っていないと考えるかもしれない。
しかし事実はそうではない。暴露された文章から中国の外交政略が失敗した原因、アメリカが適切な対策によって、なぜ中国が1989年の天安門事件以来の外交的苦境に陥っているのか、理解する事ができる。
アメリカの外交官は2010年2月、アメリカ国務院宛の報告の中で、中国の傲慢な態度が、相手国の親中派を失う結果になっていると文中で何度も強調している。ある日本人駐中外交官は中国の外交官が日中首脳会談をセットする際、強情で、嫌がらせをしてくると嘆き、また他の日本人外交官も尖閣諸島問題で、中国はますます譲歩しなくなってきているとアメリカ外交官に述べている。また最近では、中国海軍戦艦や巡視船が、日本の自衛隊の艦船や海保を挑発するようになってきている。
またイギリス外交官はコペンハーゲンで行われた国連気候変動サミットでの中国高官の行動は「傲慢で粗暴だ」と不満を漏らしている。ほかにもインドの外交官はアメリカと更に密接な協力関係を築き、中国の強行姿勢に対抗すべきだと主張している。このような情報からアメリカ外交官は、中国外交は「口先では強硬だが、は中身がない」下策だと切り捨てている。
このような中国の横暴な態度のおかげで、アメリカは苦労せず、中国を牽制することが可能になった。すなわち最近の中国外交は四方に敵を作っているのだ。そのためアメリカは外交ならびに安全保障の問題では、中国に憂慮する国家を支持し、サポートするだけで、中国当局はますます孤立を深めているのだ。
過去数ヶ月間に、アメリカの対アジア外交戦略は大きく調整された。オバマ大統領は中国中心のアジア政策を放棄し、かわりに日本、インド、韓国、およびASEAN諸国との関係を強化し、中国の圧力に対抗するよう変更した。この戦略は実施されたばかりだが、その成果はすでに現れている。アメリカは対中政略の主導権を完全に回復し、中国の隣国外交は厳しい局面を迎えている。
残念なのは、アメリカの対中戦略の変更に関する具体的な内容はWikileaksには掲載されておらず、具体的な内容は外部から推測するほかない。